無真獣の巣穴

らくがきとかゲームとかなんかそんなん。

同性愛描写がどうしたって?そいつの問題はそこじゃない。というお話。

※この記事にはDragon Age2についてのネタバレがあります。まあでもInquisitionやった人はある程度知っているのでは。DA2やったことない人にちょっと読んで欲しいかも。これから気合入れてやる予定があるとかで、絶対ネタバレを見たくないなら読まないことをおすすめします。

 

 

さて、先日、はてなブックマークでなんとなく "dragon age" を検索してみたところ、こんな記事を見つけてしまいました。2012年のものですが。

www.kotaku.jp

アンダース!アンダースじゃないか!というか、驚いたのが、自分がブックマークコメントつけているということ。Dragon Ageプレイする前の自分が食いついている…き、記憶にない。

『Dragon Age 2』、同性愛描写への苦情でシナリオライターが八方塞がり : Kotaku JAPAN

うむむ。まあ、こういうゲームがもっと増えるといいなあ。いろんなゲームがあった方がいい。異性愛しか存在しないゲームも悪かないけど……それだけじゃおなかがすくわ。

2012/09/18 22:32

b.hatena.ne.jp

…何故、よく知りもしないJUDY AND MARYの歌の歌詞を引用しているのか、謎。まあこういった話題はよく追いかけているので、自分がブックマークしていても全然不思議はないのですが、こういうゲームがもっと増えたらいいと思ったのなら、せっかくだからプレイすればよかったのに。今年に入ってからなんとなーくOriginsをプレイして、ハマりにハマりました。続いてDA2、Inquisitionと、一気にプレイしたのでした。映画も見たし。Dragon Age最高。

 

 それはさておき、この記事ですが、もっとストレート男性向けのキャラを増やせとかいう苦情に対し、DA2のシナリオライターがこんな返事をしたとのこと。

このゲームの恋愛要素は「ストレート男性ゲーマー」のためではなく、みんなのために用意されています。

 …いい話じゃないですか。男性ゲーマー向けに美女が出てくるゲームなんてたくさんあるわけですし(洋ゲーは顔がどうとかはさておき。美女がいっぱいなのは自分も嬉しいんですがね。それだけではやはりつまらない)、Originsからぶっ飛んだキャラクターしか出てこないDragon Ageにそんなもん求めるほうがどうかしていると思います。ところが、今度は同性愛者側からこんな苦情があったようです。

『DA2』に出てくる男性同性愛キャラのアンダースはあまりにも恋愛表現があからさまで相手を口説くことしか考えておらず、彼の描写は同性愛者に対する偏見を助長する

……。

…間違いない、この苦情を出した人はDragon Age2をプレイしていない。いやもしかしたらプレイしたのかもしれないけど。どこをどうやって見れば、アンダースが "あまりにも恋愛表現があからさまで相手を口説くことしか考えていない" ように見えるんでしょうか。アンダースというキャラクターは、相手を口説く以外のことばっかり考えてたように見えましたが。

 

確かに、ロマンスに発展したときの彼の愛情表現はかなり激しいもので、思いっきり主人公が押し倒されますが、ロマンスに発展した場合の話です。何年か親しくしてからの話ですし、口説いたのは一方的に主人公です。強いて言うなら、男性主人公の場合のみ同性指向を明かすので、それがアプローチといえばそうかもしれませんが、そんなもんです。

しかも、彼はバイセクシャルです。前作DLCでは女性好きだったのに、DA2で諸事情により性格が大きく変わったとはいえ、男性の恋人がいるってのは驚きましたが、まあ指向が女性寄りだけど恋人になったのは男性だったとか普通にあり得ると思うので、それはそれでよし。前作DLCではかなり軽い人物で、女性にちょっかい出しまくっていたので、そういう意味では相手を口説くことしか考えてなかった時期もあったとは思います。でも、同性愛者への偏見を助長する、というのは変な話です。バイセクシャルへの偏見を助長する、とか言うにしても、そもそもDA2のロマンス対象キャラクターは一人除いて全員バイです。性的なことしか考えてないような人もいれば、そうでない人もいます。

DA2のアンダースには、もはや恋愛がどうとかいう精神的余裕はほとんどありませんでした。もし、相手を口説くことばっかり考えているような昔のアンダースであったなら、終盤の悲劇は起きないのです。恋愛のことだけ考えていられた方が、彼にとっては幸せだったんじゃないでしょうか。

 

本当に…苦情がきそうなキャラクターはたくさんいるんですよ。Dragon Ageシリーズには。というか、まともなキャラクターの方が珍しいので。そんな中で、恋愛関係の話でアンダースにこんな苦情が来たのは本当に不思議なことです。これは言いがかりと言っていいんじゃないですかね。

…いや、アンダースがまともなキャラクターだって言ってるわけじゃないんですよ。彼がまともだなんて、間違っても言えないのです。この人は相当な問題を抱えています。これだけ癖のある…危険思想のキャラクター持ってきて、相手を口説くことしか考えてないとかどうとか…一体どこ見てんだろう…って感じですよ。同性愛者が問題行動を起こすという偏見を助長する!とかならまだ分かります。それでもおかしな話ですがね。いろんなキャラクターが出てくるのだから。

もう本当に…この人の問題はそこじゃない。そこじゃないんですよ。具体的に何かって…ネタバレになりますが(DA:Iにおいては周知の事実です)

 

 

 

 

 

 

 

彼は、教会を爆破して無実の者たちを皆殺しにした、テロリストです。

 

元テロリストとかではなくてですね。主人公たちと行動を共にし、結果的に出した答えが、教会の爆破です。しかも主人公を騙して集めさせた汚物で爆発物作りやがった。

いや、色々とのっぴきならない理由はありました。迫害されている同胞の状況をなんとか変えたかったのです、彼は。ただし教会は直接的には迫害に関与してないんですよね。根本的には教会の方針に問題があるのですが、地方の一教会にはどうにもならん問題で、少なくとも直接の原因ではないし、爆破したって大半は無力な修道士・修道女たちで、彼らが死ぬだけです。しかも近年でもっとも尊敬されていたとされる人物も一緒に殺しました。味方にできたかもしれないのに!こんなんで状況が改善するわけないのですが、追い詰められた末にこのような事件を起こし、さらにこれが後の戦争を引き起こす引き金になるのでした。まさに泥沼。

…というわけで、こんな人物を引き合いにだして、事実と異なるところを批判するとは、やっぱりDA2やってないんじゃないですかね。それか、ロマンス時の一場面だけ見たとか。本当に、そいつの問題はそこじゃない。これが言いたかった。数年前の記事に突っ込むのもどうかとは思いましたが、これだけが言いたかった。当時の自分が言えたらよかったのですがね。

 

まあ、アンダースはアンダースであって、既にアンダースではないのです。色々と正気でいられない事情があったのです。しかし、おかしくなって衝動的に事件を起こしたわけではないし、誰かに操られていたわけでもない。考え抜いた末に、こういう結論に至ったのです。なかなか複雑なんですよ。かなり意見の分かれるところじゃないでしょうか。興味があるなら、DA2をプレイして、自分の目で何が起きたのか見てみることをおすすめします!これもどうしても言いたかった。InquisitionやOriginsは絶賛されても、DA2の評価はあまり高くないので。使いまわしマップが多いとか自由度低いとかエルフの姿変わりすぎとか色々言われてますが…濃厚ですよ、DA2。評判だけで敬遠するにはもったいない!

 

…ただ、個人的には、明るくて陽気だったアンダースをこんな悲しいテロリストに仕立て上げたシナリオライターに、文句を言いたい気分ではあります。いや誰がどの時点でこの展開を決めたのか知らんですが。

 

 

しかしまあ、こういう意見が寄せられたからこそ、Inquisitionがあるのかなあという気はします。Inquisitionでは、純粋に同性を指向するドリアンや(セラもかな?)、トランスジェンダーであるクレムの描写など、性的少数者の描写はかなりリアルなもので、実際に当事者のことを調べていなければできないことだと思ってます。

こんなところでこんな流れでカミングアウトするのもあれですが(Twitterでは散々言ってますが)、自分は性自認も性指向も曖昧でAセクシャル寄りという、性的少数者に分類される人間なので、こういうの気になるポイントなのです。別にそこまで詳しいわけじゃあないですがね。ドリアンやクレムには本当に驚きました。自分のゲームの観測範囲は狭いものですが、ここまでしっかりと性的少数者を描いたものは見たことがなかったし、ゲームでこういった心理が描かれるとは思っていなかった。

特にクレムの話、体を変えなくてもここで受け入れられていて、自分はそれで満足しているというの、知識なしに出てくる発想じゃない気がします。性別に違和感を持ってる人がみんな体を変えたいわけじゃないし、体を変えたくない奴は偽者なんてこともないし、変えなくても自認の性を受け入れてくれる、生きる場所があるってのは、それはそれでいい話じゃないですか。

って単にいい話ってわけでもないんですが。変えたくても変えられないですし、受け入れてくれたクナリには独自の思考と風習があるからこそなのです。これまた良いとか悪いとかいう問題でもなく。まあただのいい話なんかないっすよ、現実にも、Dragon Ageにもね…!アンダース…畜生!Awakeningではよい結末を迎えたのに!

 

いやとにかくDragon Ageすごいですよ。こうした少数者を描くのも、個人の多様な考え方やあり方、選択に焦点をあてたこのシリーズらしい。衝突ばっかりですがね。仲間同士で意見が食い違ったり。誰かの都合がいいように動けば、また誰かにとっては都合が悪いとか。良いところも悪いところも、分かり合えないことも多いのですが、それでも 仲間については、"彼らがいなかったら、私はどうしていいか分からない" という一言に尽きます(InquisitionのDLC、ハコンの顎より)。

 

…無真獣はしばらくセダス大陸から出られないようです。BioWareこわい。

 

 

 

 

(2019/1/1 追記)

久々にDragon Age関連の記事を書いていて、そういえばこの記事意外と読まれているっぽいよなあ…と思って読み直したのですが、あれですね、kotaku japanいつのまにか無くなってましたね。まあ、だいたい言いたいことは分かってもらえるかと思いますけど。

しかしたった3年ちょい前に書いた記事ですが、今ならこういう言葉選びはしないなあ…とか、色々気になってしまいますね。自分も結構変わっていってるようです。

それと、このアンダースに寄せられた批判ってのは実際どういう文脈での批判だったのかなあ…というのが今は気になります。本当にここに書かれていたような話だったんだろうか?と。まあ記事消えてますけど。書かれていた通りなら、やっぱり言いがかりに近いなあとは思います。批判はプレイしてからにしろとか言いたいわけではないです。プレイせずに批判もありだと思いますし。プレイ以前の問題があることもあるし。ただあまりに実際の内容と離れているとね…。

あとアンダースに関する見解も今はちょっと変わってます。もう一度プレイすればもっと色々思うところが出てくるだろうな…というか。そういう感じのアンダース考察記事、書いてみたいなーって気持ちはあります。