無真獣の巣穴

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Dragon Age Inquisition プレイ記録⑤ 再び「座して待つ」トム・レーニアを裁け!


※この記事ではキャラクターについての重大な秘密が暴露されているため、作中で真実を知りたい方は読まないことをおすすめします。

 

 

 

 

 

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これまで審問官による裁判について書いてきたが、この人物について書かないわけにはいかない。罪人、トム・レーニアだ。トム・レーニアはとある貴族の一家を部下に命じて皆殺しにさせた罪で、オーレイにて処刑されるところだった。それまで逃亡中だったが、部下が公開処刑されるのを止めに入り、自らが命を下した本人だと宣言し捕らえられた。審問官は交渉によってオーレイに特赦を要求し*1、スカイホールドに連行。審問会で裁くこととなった。なぜこのようなことまでして囚人を連れてきたのかというと、この人物こそ審問会にグレイ・ウォーデンとして参加し、審問官と行動を共にしていた「ブラックウォール」だからだ。

 

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トム・レーニアはウォーデン「ブラックウォール」を名乗って審問会に参加していたが、実は正式なウォーデンではない。嘘だったのだ。本物のウォーデン・ブラックウォールに徴兵され洗礼の儀式の準備をしていたが、ブラックウォールはモンスターに襲われて亡くなってしまったのだという。結果、ウォーデンになれず1人取り残されてしまい、行くあてをなくしたようだ。他の仲間をあてにしようにもその場にはおらず、またブラックウォールを殺害したのは自分ではないという証拠も持っていなかった。そして過去の名前を捨て、ウォーデン・ブラックウォールの名前を使って各地で「善行」をしていたらしい。

そこでなぜ本名を捨て他人の名前を名乗るようになったのかだが、おそらくそもそもが罪人だったからだろう。グレイ・ウォーデンの肩書を正式に得ることができたのであれば処刑されることはなかろうが、それが挫折してしまった。かれらが罪人を徴兵するのは何ら珍しいことではなく、むしろそういった例は多いらしい。今回のInquisitionにつながるOriginsのプレイではドワーフの主人公が階級を偽って闘技場に参加し、その罪で処刑されるところを徴兵されている。前回も書いたが、ウォーデンの徴兵権は非常に強力なのだ。

ところが、トム・レーニアは儀式の準備の途中で上官を失い、新兵として正式に参入できずに1人になってしまった。肩書きがなければ結局ただの罪人のままだ。それで、ウォーデン・ブラックウォールを名乗るようになったのだろう。

 


ブラックウォールの肩書と名前を利用して悪事を働いていたわけではなく、むしろ善良であろうとしていたようだが、審問会においてウォーデンを名乗って活動し信頼を得ていた以上、その嘘の罪は軽くはない。さらには審問会への協力を募るために古の協定を利用しようともしていた*2。実際にはウォーデンではないにもかかわらずだ。今回は回避したのだが、偽物のウォーデンと共に古の協定を利用してしまったとなれば、審問会の信用に大きな傷がつくことになるだろう。

オーレイで処刑されることになっていた罪状についても考えてみよう。当時、オーレイでは女帝セリーンとそのいとこのギャスパール大公が権力争いをしていた。トム・レーニアはオーレイの帝国軍の隊長だったが、高い報酬を目当てにギャスパール側につき、セリーンの有力な支持者であった貴族の殺害を請け負った。そして部下たちに何の説明もせずに貴族の殺害を実行させた。本人曰く、貴族が連れているのは兵だと想定して部下たちに皆殺しを命じたが、実際には子供含む家族連れで、結果的に罪もない貴族の一家を皆殺しにしてしまったのだという。実行した部下たちは捕らえられたが、自身は逃亡。その後ウォーデンに徴兵された。

 

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まとめてみるとなかなかに卑劣な行いだが、貴族の殺害については審問会も似たようなことをまったくしていないとは言えない。金のためか大義のためかという違いはあるかもしれないが、策略のために有力者を殺しておくというやり方は我らがスパイマスター・レリアナが得意とするところだ。今回の審問官が積極的にそのようなことを命じたことはなかったかと思うが*3、情報を得るためや邪魔者を排除するために暗殺をしていないとは言い切れない。

金のためだろうが大義のためだろうが人殺しに変わりはない。どんな理由であろうと、襲ってくるわけでもない相手を殺していい理由にはならないはずだ。トム・レーニアが裁かれる一方で審問会のやることは何も問われないのだとしたら、勝者たる権力者側がやるのは許され、そうでなければ重罪だということか。あるいは大義さえあれば何をしても許されるのだろうか。本人も言っていたが、時の運があればこの行為が歓迎される可能性すらあっただろう。そんなものかもしれないが、なんともこの世の不条理を感じる。

 


ただ、それでも子供を含めた家族まで殺す必要はなかった。ターゲットにされていた貴族本人も裏でなにか卑劣なことにかかわっていた、という事情があるわけでもなかったようだ。被害者は単純に政敵の支持者だからという理由で家族もろとも殺された。部下たちは命じられたままに行動しただけで、命じた側は家族の同行は知らなかったという話だが、証拠があるわけでもない。殺されたのが家族でなく部下の兵だったとしても、何をしたわけでもないのに殺されるいわれはない。命令を実行した部下だけに責任を負わせ、隊長でありながら逃亡したことを考えても、これについて酌量の余地があるとは言えないだろう。ただ、トム・レーニアもまたオーレイのグランドゲームの加害者であり被害者でもあるとは言える。オーレイの貴族間ではこのようなことがいつも繰り広げられていて、そこに構造的な問題がある。

 


トム・レーニアに対する選択肢は「自由にする」「ウォーデンにまかせる」「嘘を続けさせる」となっている。嘘を続けさせるということは、過去のことは無かったことにして「ブラックウォール」として今まで通りに受け入れるということだろう。見て見ぬふりといったところか。自身の罪を認め、処刑されると知りながらオーレイに出頭したことを考えると、これは本人のためになる選択肢とは思えない。「処刑」や「投獄」が存在しないが、まあそうしたいなら引き渡しを要求せずにオーレイに置いてくるとよい。ただし仲間を1人失うことになるので、できれば避けたい。

ウォーデンにまかせれば、その後洗礼の儀式を受けて正式に加入することになるのだろう。ウォーデンが過去の罪を問うことはないし、腕が確かなのは審問会の活動で実証済みで、特に問題はなさそうだ。儀式に失敗すれば死ぬことになるが、どのみち処刑される予定だったため、そこは本人も納得するだろう。ただしウォーデンには穢れを通じて操られやすいというリスクがあり、今までの物語の展開を考えると新たなリスクを増やすことに協力するのも複雑だ。ブライトに対抗するには必要な組織でもあるが、そのやり方が根本的な解決にはならない、あるいは実は悪化させている可能性がなくもない。よって今回はこの選択を避けることにした。

そして残った選択肢は「自由にする」だ。今回はこれを選ぶことにした。オーレイでの罪、審問会に対する罪を考慮するとだいぶ甘く感じられるが、自由にすると言っても無罪放免ではない。ブラックウォールではなくトム・レーニアとして償いのために審問会につかえよというわけだ。これまで下してきた判決がだいたい「投獄」か「(審問会のための)労働」だったことを考えると、一貫性がないということもない…と思いたい。本人は罪を認めて出頭しているし、自らの行いが卑怯だったことを悔いているのも明らかで、部下が処刑されるのを1人で止めに行っている。またこれまで善良であろうと努めていた実績もあり、同じことを繰り返さないという意志があることは間違いない。それに審問官と共に戦うということは、審問会が目的を果たすまで危険な任務から決して逃げられはしないということだ。

 


しかし、やはりどうしてもウォーデンのルース卿のことが思い起こされる。後世へのメッセージとしてであっても無期限にあの牢獄へ放置するのは残酷に過ぎるし、また機会さえあれば社会への貢献を惜しまない人物でもあったはずだ。せめてスカイホールドの牢獄がもう少しマシなら……。

ところで、トム・レーニアが収容されているときにオーレイの牢獄を訪れたが、あまりのまともさに感動してしまった。何しろちゃんとした床と天井がある!ただやや蜘蛛の巣が多く、管理が行き届いているというほどではなさそうだ。それでも粗末ではあるが一応の寝具もあり、監視も見る限り複数人いる。もちろん素晴らしい環境とはとても言えないが、スカイホールドのそれに比べたら圧倒的にマシな空間だ。いつ崩落するか分からない牢獄に囚人を押し込めておくのは、それだけで拷問に匹敵する。審問会はぜひこの点を見直してほしい。

 

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↑しっかりした作りの牢獄。素晴らしいとは言い難いが、スカイホールドよりはるかに安定している。少なくとも床が抜け落ちて落下死する心配はないだろう。

 

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しかしオーレイでは公開絞首刑が行われているようで、見物人も多く集まっていた。しかも処刑されようとしていたのは実行犯の1人ではあるが首謀者ではない人物だ。下っ端を見せ物的に処刑して「罪を裁いた」演出だけするのは根本的な解決からもっとも遠く、そこはあまり見習いたくないなとアトリアさんは思ったかもしれない。

 

 

 

 

 

*1:オーレイからトム・レーニアを引き渡してもらうには他にもやり方があるが、別の誰かとすり替えるとか軍を出すとかだった気がする。まっとうな組織がすることではない…アトリアさんは表向き公正であることを望んでいる。まあ権力を振りかざして囚人を解放させるのもまっとうなやり方とは言えない気もするが、処刑されると困るし。

*2:アトリアさんは薄々怪しんでいたので協定は使わなかった。アトリアさんは賢明なので。中の人が3周目だからお見通しなのだ。

*3:今回の戦略テーブルでは基本的に交渉を使い、密偵は偵察や少人数での敵の討伐に専念させて暗殺は選ばない……黒カラスの協力者は使ったが。ただし、結果的には黒カラスを抜けたゼブランが協力してくれた。兵を使うことは多くはなく、大規模な探索や後片付けの他はもっぱら細々とした資金調達のために派遣している。