無真獣の巣穴

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Dragon Age Inquisition プレイ記録⑧ 続・ロマンス「アイアン・ブル」

※この記事にはネタバレと中の人の怒りが含まれます。

※やや性的な画像があります。

 

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引き続きアイアン・ブルとのロマンスについて。最初は肉体のみの関係で、それだけでもまったく構わないのだが、とりあえず精神的にも深い関係を目指すことに。ドラゴンの歯を割って作ったネックレスを渡すことで「本気」を示すことができる。

ちなみに審問官と関係を持っている間は他の人とは性交渉しないらしい。まあ、色々気をつけるべきことをクリアしてくれたら我が審問官のアトリアさんは相手が誰と関係持ってようが別に気にしないと思うが…

 


ドラゴンの歯はいわゆるハイドラゴンの歯だ。当然、戦って殺さなければ手に入らないし、そう簡単には殺せない。ハイドラゴンは成長したメスのドラゴンで、そう滅多に姿を現さないため、これが「深い関係」を築くための必須の贈り物だとすると、クナリは実質個人的な深い関係は築かないということだろうか。もしくは本来ハイドラゴンである必要はなかったのかもしれない。

アトリアさんは何度か書いたように自然や野生生物への畏怖と敬意を持っているため殺すのはあまり気が進まないはずだが、ハイドラゴンは人間の生活領域で共存するにはあまりにも巨大で、さらに家畜や人を襲ってしまう。審問官としては安全確保のためにどのみち殺す必要が出てくるだろう。残念なことだが。

このような考え方を持つ設定に至ったのは、アトリアさんというキャラクターを最初に作った別のゲーム作品*1に由来する。巡礼中にクマを攻撃しないことによって試練が達成され、野生生物と敵対しない恩寵を受けたことが強く印象に残ったからだ*2。Dragon Ageにも生物を無駄に狩らずに済む要素があってほしかった。

Inquisitionにおいては元サークル魔道士であるため野外に出る機会は多くなかったかもしれないが、サークルでは動植物の調査なども行なっているはずなので、研究目的で野山に行くことがあってもおかしくはないだろう。常に監視のついた閉鎖空間におかれているものが、外の世界…とりわけ広大な自然に特別な感情を抱くのは不思議なことではないはずだ。今回のアトリアさんはそのような経緯を持っているとしておこう。

 

話を戻そう。ブルにネックレスを渡そうとすると、先にブルから渡したいものがあるのだという。どうやら例のプレイをまたしてくれるようだ。今度は審問官の宿舎でない別の部屋でするらしい。すると突然カレン、カサンドラジョゼフィーヌが部屋に入ってきてしまうという想定外の展開を迎える。これには笑ってしまった。

 

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…笑ってしまったのだが、カサンドラに「気晴らしか」と問われて本気の関係かそうでないかを答えることになり、複雑な気分になった。もちろんネックレスを用意してきたくらいなので深い関係を目指しているのだが、気晴らしの関係だったらなんだというのだろう。どう答えても問題ないと言ってくれるのかもしれないが(ブルとの関係は進められなくなりそうだが)、個人的な関係について問題あるかないかをジャッジされ、かなり落胆した。しかもかれらのそのうろたえ方がかなり侮辱的に感じた。その後ブルが大丈夫かと聞いてくれるが、アトリアさんはともかく中の人は正直大丈夫ではなかった。無事ネックレスは渡せたが、想定外にもやもやとした気分が残ってしまった。

はっきり言ってなぜこのような展開にしたのか理解に苦しむ。意図せず乱入してしまって顧問が驚く、まではまだ笑って許せるが、なぜああも侮辱的な反応をされなければならなかったのだろう。カレンやカサンドラの規範を重んじる性格を考えればブルや今回の審問官のような性的傾向は理解しがたいものであるだろうから、あのような反応があること自体は理解できる。ただ問題に思うのは、それが「面白い場面」として描かれていると感じたからだ。性交渉中に乱入されて個人的な関係性のジャッジをされるのは何も面白くない。

さらに考えてしまうのは、アイアン・ブルの相手は男性である場合もあることだ。今回は結果的に異性同士になっているが、同性での行為に対してああいう反応を見せられたら、はっきり言ってかなり深いダメージを負うと思う。キャラクターの意図として同性同士の行為についてああいう反応をしたのではないとしても、あのような侮蔑に感じられる反応をマイノリティ当事者は現実に嫌というほど浴びせられているし、同性同士の関係が築けるゲームにおいてですらそうした反応を見なければならないのは酷じゃないのか。少なくとも異性愛者ではない中の人には酷な場面だったし、現実に受けた差別的な態度を思い出してきつかった。せめてもっと真面目に反論できたり怒ったりできる選択肢を設けてほしい。まあ、審問官の表情は見た感じ結構怒っていたが。

 

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↑顧問らの表情がうっすら笑っていてかなり嫌だった。こういう視線が本当にこたえる。キャラクターへの好感度がかなり下がるし心底いらない演出だったと思う。

 


ついでだから書いておくが、Dragon Ageシリーズは全体的にかなり性的な要素が多く、それはシリーズのよいところであると思っているのだが、メンバー内でのセクハラ発言がやたら多いなどは今となっては問題があると思う。Originsのころに比べるとだいぶ減ったのだが、Inquisitionでもさすがにそれはやめるべきだと思う会話もあり、そこは審問官が割って入って止めるくらいの選択ができてもいいのではないかと思う*3。まあ、一番新しいInquisitionも2014年の作品なので仕方がないかもしれないが。そういう描写があることが問題というより、セクハラ発言への返しが結構面白かったりして深刻さがなく、結局「面白いやりとり」で終わっていることに一番問題があるのではないかと思う。

それと作品の外での話だが、Twitterで公式アカウントがキャラクターの見た目をいじるプロモーションをしていたのもかなり面白くなかった。そういうのはもうやめるべきだと思う。どうも問題は表現を「面白く」しようとした場合に表れやすいようだ。

自分の意識もこの7年でかなり変わったし、社会の方もそうだ。ゲーム界隈でも差別やハラスメントの問題が多々明るみになっている*4し、解決しなければならない問題が現実に山積している状態だ。全員がバイセクシャルではなく同性愛者のキャラクターがいてクエストで苦悩が語られたり、トランスジェンダーのキャラクターがいたり、BioWareセクシャルマイノリティをしっかり描いていることには当事者として好感を持っているし救われてもきた。次の作品ではもっと前進していると嬉しい。いや、続編、本当に出るのかな…と最近不安になっているんだが。

 

 

 

 

今回はプレイ記録というより文句になってしまった。いやしかしあの場面には本当に納得いっていない。ロマンスに水を差されて中の人はちょっと怒ってる。

アイアン・ブルとのロマンスについてはまだ続くのでまた次回!

 

 

《追記》

しかし思い出してみると10年くらい前の海外ドラマで、同性同士で一緒にいたところをあとから来た人たちに見られ、いい雰囲気になっていると「勘違い」され、「問題ないよ、自由だからね!」みたいなことを言われるという場面があった。当時、なんだそりゃあ、どこから目線なんだお前ら…と、もやもやした気分だったのだが、このような描写が「寛容」の表現だった時期があるのかもしれない。映画やドラマをあまり多く見る方ではないしゲームも限られた作品しかやっていないので分からないが…。マジョリティの立場にある人物が「問題ない」「自由だから」などと言い残していくのははっきり言って寛容な態度ではない。マジョリティがいいか悪いかジャッジするというそれ自体がだいぶ上から目線なのだ

 

 

 

 

 

*1:The Elder Scrolls 4 Oblivion

*2:TES4における聖戦士装備を得るためのクエストで、キナレスの祠を巡礼するときのこと。クマに襲われても反撃してはいけなかったのだが、理解せずに反撃しまくってなかなかクリアできず、大変な苦労をした。それ以来アトリアさんはあまり信仰心はないもののキナレスにだけは畏怖を抱いていた。一神教より多神教に理解を示しがちなロールプレイになるのも最初に生まれたのがTES4だったからである。まあ、中の人も一神教にあまり馴染みがないのもある。

*3:止められる会話もある。

*4:今回少し書いたTESについても作曲家のセクシャルハラスメントの問題があった。続報がないのでその後の詳細がわからないままだが…。新作にはかかわっていないらしいが、これからTES5の新バージョンが発売される他コンサートも予定されているようで複雑な気分だし、自分はその作曲家の作品は避けたいと考えている。