無真獣の巣穴

らくがきとかゲームとかなんかそんなん。

Dragon Age Inquisition プレイ記録④ 続「座して待つ」審問官による裁き


※この記事はメインクエストのネタバレを激しく含みます。

※肝心のイベント場面のスクリーンショットが全然撮れていないので微妙に関連のあるスクショを添えてお送りします。(元画像が暗いため見やすいように調整してあります)

 


前回はクレストウッド村長とサーニアのプーランについて書いた。どちらも限られた選択肢の中で人々のためにやれることをやったという側面はあるのだが…。やはり「事実を隠匿しない」「同じことを繰り返さないという意志」「改善の努力」という反省の姿勢が致命的に欠けていた。特にプーランは人身売買によって利益を得ていたので、無罪放免にして生活に行き詰まったら同じことを繰り返してしまいそうだ。

それにしても判決を出してはみたものの、投獄や労働というのがどの程度の期間でどういう環境に置かれるのかがさっぱり分からないため、本当にこれでよかったのかと思わないでもない。クレストウッド村長が投獄されたフェレルデンは現在アノーラ女王が治めていて、囚人を劣悪な環境に置くことを許すとは思わないが、実際はどうだろう。労働というのも気になる。何をするのだろうか。まさか生きて帰れないような過酷な労働を課すのだろうか。

まともな組織ならたとえ罪人であろうと痛めつけることはしないと思うのだが、果たして審問会はどうか。「判決は言い渡したが具体的にどこで何をするのかは知らなかった。自分に責任はない」などと言えない立場であることは審問官も肝に銘じておくべきだろう。強制的に最高責任者に据えられて何もかも丸投げされているので、酌量の余地はあると思うが。

 

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投獄したことでもっとも複雑な気分になった囚人といえば、グレイ・ウォーデンのルース卿だ。ルース卿はブラッドマジックの儀式のために仲間たちを殺したのだという。提督クラレルの命令に従って行った組織的な過ちだが、間違った行動であったと深く反省し、打ち首による処刑を望んで自ら出頭した。

グレイ・ウォーデンはブラッドマジックの使用を容認している極めて珍しい組織だ。ブライトに対抗するという組織の性質上、使えるものは何でも使うという方針で、ウォーデンのルール上ブラッドマジックの儀式に参加したこと自体は問題なさそうだ。かれらは必要とあれば悪魔さえ使う。問題は仲間を殺したのが必ずしも同意の上ではなかったであろうことと、そもそも儀式の目的が間違っていたことだろう。かれらは偽物の「呼び声*1」に翻弄されてヴェナトリに騙され、無意味に多数の仲間の命を奪った上、世界の破滅に貢献するところだった。

ウォーデンは王族に対しても徴兵権を行使できるなど非常に強い権限を持った組織でもある。それはセダスの各勢力と交わされた古の協定によるものだろう。そんなウォーデンを審問官が裁いていいのか分からないが、発足したばかりの審問会に協定は関係ないのかもしれない。そこは審問官の考え方次第で、やったもん勝ちみたいな感じだろうか。まあウォーデンは過去にフェレルデンから追放されたりもしているし、この裁判以前に審問会が過ちを犯したウォーデンの処遇を決めてしまっているのだが。とりあえずこの裁判は意図がどうであれ「審問官はウォーデンさえ裁くぞ!」というさらなるアピールとして機能してしまうかもしれない。

 

ルース卿に対する選択肢は「地底回廊」「裁かない(釈放)」「投獄」「処刑」といったところ。グレイ・ウォーデンの歴史と功績に敬意を表するなら裁かないのがよさそうだ。そもそも提督を信用して積極的に協力したものたちは他にもいるはずで、それを認識した上でウォーデン全体に「審問会に協力せよ」と言い渡したのだから、ここで個人を裁く必要がそんなにあるとは思わない。

しかし本人が言うように「あれは過ちだった」というメッセージを示すべきだというのは説得力がある。「ブライトと戦うためならブラッドマジックや悪魔さえ使う」という性質をもって強力な徴兵権を行使できるウォーデンは常に暴走の危険を抱えている。「いくらウォーデンでも許されない行いはある」というメッセージを後世に残すのは意義あることだろう。

それにしても打ち首というのはどうだろう。後世に必要なメッセージを残すために自ら見せしめとして死のうというのだから本当にそれは凄いのだが、そんな見せしめを堂々と実行してしまう審問会は危険な存在になってしまわないだろうか。このような人物はむしろ頑張って社会に貢献してほしいのだが、確かに後世に教訓を残した方がいいとは思うので、ここは「投獄」を選ぶことにした。

ウォーデンらしく地底回廊で戦って死ぬべし、というのを選んでもいいかもしれないが、ウォーデンの穢れの性質を考えると最期に地底回廊へ行く慣わしは本当に大丈夫なのか疑問に思う。無事に死ねたらいいだろうが、死ねずにいると操られたりしないだろうか。生きたまま捕らえられ「変えられて」しまったらダークスポーンを量産することになってしまう*2。深く考えるとあまり選びたくない選択肢だ。

しかしこの「投獄」だが、「無期限」となっているのだ。ルース卿に対しては重すぎるように思う。しかも、スカイホールドの牢獄は本当に状態が悪い。期限付きでもあそこに入るくらいなら処刑された方が若干マシなのではと思えるくらいひどい。あのまま使っている審問会が理解できない。直せないなら他に作るとかしなくていいのか。まともな組織を目指すなら、審問会はまず牢獄の環境をもっとマシにするべきだ。ルース卿には本当にすまないことをした。

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↑スカイホールドの奥の方の牢獄。安定していそうな床がほとんどない。部屋の中は石の床が存在するので多少マシだが、様子を見にいくのも命懸け。

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↑投獄されたルース卿。この部屋には寝具らしきものも見当たらない。ちなみによくよく見ると光が差し込んでおり、天井が抜けているような気がする。

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↑向かい側にある部屋の方が若干マシである。せめてこっちに入れればいいのに…

 

 

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もう一件、大公女フロリアンヌの裁判はなかなか興味深かった。大公女はオーレイの女帝セリーンの暗殺を企てていた真犯人だ。コリーフィウスの下で世界を手に入れたかったらしい。野心的な、絵に描いたような悪役だ。

コリーフィウスは社会的な立ち位置や他人の命など気にかけるようなタイプではなく、どうやらこの世をその力で支配したい古の存在だ。それに積極的に協力することは「自分に利益があれば大虐殺も辞さない」ということだろう。さすがにこれを許すわけにはいかない。ただ未遂に終わっており、すでに野望はついえている。


大公女フロリアンヌに対する選択肢は「追放」「道化師にする」「修道院へ行かせる」「密偵勧誘」「労働」だいたいこのようなものだ。道化師にするというのは嘲笑うために屈辱的な芸をやらせるのだろうか。アトリアさんも性格は悪い*3が、あまりそういうことは面白がらなそうだ。「処刑」がないのは、わざわざ処刑せずに連れてきた人物だからだろう。「投獄」がないのが少し不思議だ。

そして注目すべきは「労働」の内容なのだが、これが「市民と一緒に汗を流せ」というものなのだ。言葉の内容から、なんとなく労役や懲役のようなものとも違うように感じられる。「一般市民と一緒に普通に肉体労働して生活せよ」というふうに聞こえる。宮廷で豪勢な生活をしてきた貴族に市民生活を味わわせる。これはなかなかいい選択肢なのでは。そう思って前回のプレイではこれを選んだ記憶がある。

しかしちょっとひっかかるところがあった。市民と共に汗を流すことが懲罰であってたまるか、という気持ちが芽生えたのだ。ゲームのロールプレイは置いておいて、中の人たる自分は現役のブルーカラーだ。この国の偉い連中、1日くらいここで働いてみろと思うことも結構ある。しかし、自分の仕事場に来るのが「懲罰」だったらちょっと複雑だ。市民との労働や交流の経験によって更生をうながすと思えば悪くはないのだが、貴族に対する「屈辱」として体験させるのだとしたら結構失礼な話だ。

というわけで中の人の個人的感情により市民との労働は選ばず、どうせ働くなら適材適所になおかつ審問官の目が届きやすいところで、と考えて「密偵勧誘」を選択したのだった。ただ、市民と一緒に汗を流すことが身分の剥奪も意味するのだとしたら、やっぱり悪くない選択肢だったのかもしれない。

 


しかしクレストウッド村長やプーランが苦しい中でなんとか生き延びるために犠牲を出していたのに対して、フロリアンヌ含めオーレイの宮廷の貴族たちは「グランドゲーム」と称して日頃から当たり前のように裏側で殺しをしている。そこで犠牲になるものの多くは貴族に使われるスパイや身分の低い召使いたちだ。自ら手を汚すこともなく、それが裁かれることもない。ゲームは政治的な駆け引きでありつつ伝統文化でもあり、娯楽的な側面もある。狡猾に、うまくやるほど評価は高まる。オーレイの貴族階級の中で生きるのには必須の要素だが、「生きるため」の意味合いの違いに途方もない格差を感じる。かれらの生活は言うまでもなく一般市民や二級市民*4の搾取の上に成り立っている。この危機迫る情勢の中でさえゲームに興じているその様は、華やかなオーレイの暗部を表している。

 

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ジョゼフィーヌの個人クエストでは彼女がオーレイでバードを目指していた頃の話を聞くことができる。グランドゲームにおいては死も駆け引きの要素に過ぎないが、ジョゼフィーヌの思い出話は「殺人」が一個の人間の未来をすべて摘み取ってしまうという、ごく当たり前のことを思い出させる。そしてどんな大義名分があったとしても、審問官の日常が人殺しであることを思い知らせてくれるのだ。

多くの囚人が様々な理由で裁かれる一方、決して裁かれることのない特権階級にあるものもいる。そして着実に地位を高めている審問官もそうなりつつある。そろそろ審問会を縛る鎖も必要そうだ。

 

 

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↑ちょっと舞踏会の疲れが出ているアトリアさん。

ちなみに今回の審問官アトリアさんは一応貴族なのだが、出身が自由連邦なのでグランドゲームの経験はないようだった。舞踏会ではゲームに対するあきれた感情を持っていただろうが、負けず嫌い*5でもあり、見事に「舞踏会の麗人*6」を演じきった。中の人は3周目なのでそこそこ慣れているのだ。ダンスではとにかく直球を避け、質問は質問で返し、ひたすらまわりくどい選択肢を選ぶと高評価を得られる。よくわからないがそれがオーレイの作法なのだろう…

 

 

 

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とりあえずBioWareは牢のカスタマイズを用意してくれ…カサンドラに生きたまま食わせるぞ。

 

 

 

 

*1:本来は「死期」が迫る頃に聞こえてくるもの。ウォーデンは穢れによってアーチデーモンと繋がりを持っている。Originsではアリスターも主人公も新兵だったのでまだ穢れは浅く、アーチデーモンの夢を見る程度だったが、歳と共に繋がりが増して色々聞こえたり色々見えたりという感じだろうか。アリスターが詳しい話をしていた気がする。

*2:Originsの地底回廊でのメインクエストで判明する。怖い。

*3:大公女を見下ろしながら「私のパーティへようこそ」はなかなか尊大でよかった。

*4:オーレイのシティエルフの生活について詳細に描かれていないのだが、豊かな生活をしているならブリアラが立ち上がる必要はなかったわけで。

*5:でも急にどうでもよくなって投げ出したりもしそう。気まぐれでうそつき。ハンターハンターならたぶん変化系に違いない。

*6:宮廷の好感度100で得られるトロフィー。もちろんばっちりゲットした。

Dragon Age Inquisition プレイ記録③ 「座して待つ」審問官による裁き


※この記事はかなりのネタバレを含みます。

 


ヘイブンから逃れてスカイホールドへ到着すると、主人公は(強制的に)審問官に任命される。審問会は教皇の右手と左手によって立ち上げられたもので、単純に真相を究明する組織というだけでなく、アンドラステ信仰が根本にある。現実にあった異端審問とかぶり、まあ、あまりいい響きの役職ではない。

主人公は世間的には「アンドラステの使徒」などと呼ばれていることもあり、アンドラステの名の下に異端者に裁きを…という文字通りのプレイもたぶんやろうと思えば可能そうだ。いつも「必要があることならやるが、使徒とか呼ばれるのは冗談じゃない。信仰心ないし」というプレイをしてしまうが。

 

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メインクエストやサイドクエストをこなしていくと、捕らえた囚人を審問官が玉座で裁くというイベントが発生する。ジョゼフィーヌがある程度の情報を提供はしてくれるものの、ほぼ完全に審問官の裁量に委ねられ、かなり悩むことも多い。下した判決は戦略テーブルで行う作戦につながる他、仲間の好感度に影響し、正直他人の意見を聞けないのに顔色はうかがわないといけないプレッシャーみたいなものを感じる*1

どういった判決を出そうともストーリー進行に大きく影響しないので、ゲーム的にはそこまで慎重にやる必要はない。しかしこの世界に浸り全力でロールプレイするなら、真面目に考えてみるのもいいだろう。

少々厄介なのは、その場で他人の意見を聞けないこと、選択肢がいつも一定ではない*2こと、加えて具体的にどうなるか分からない選択肢があることだ。選んでみたら意図しない発言が飛び出してしまうのはこれに限ったことではなく、こまめなセーブが大切である。

 

前回の主人公ならどんな相手にも慈悲を持って接しただろうが、今回の主人公アトリアさんは基本利己的であまり倫理的ではない。しかし、安易な処刑を好むようなタイプでもない。とりあえず善良で公正な体裁を保ちたいと思っている。その方が対外的に面倒が少ないし、寝覚めの悪いことをすると飯がまずくなるからである。なおかつどんな悪人でも役に立つなら役に立ってもらうだろう。

というわけで、基本的に囚人を殺してしまう選択肢を選ぶことはない。物語は中盤だが、今のところ誰も処刑してはいない。前回のプレイの詳細を覚えてはいないが、今回は投獄が多めかなと思う。

 

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↑水没した旧クレストウッドの村

個人的にもっとも印象深い囚人といえば、クレストウッドの村長だろうか。クレストウッドはフェレルデンの小さな村で、10年前の第5次ブライト時に大半が水没、多くの犠牲者を出した。

実は村を水に沈めたのはここの村長だ。彼によれば、かつてこの村では難民を積極的に受け入れており、その多くがダークスポーンの穢れの病に侵されていたという。そしてそれを治す術は存在しない。ブライトが村に迫り、避難を呼びかけても、逃げられない家族を見捨てられないものたちが彼らのそばを離れようとしなかった。それで堰を開放してダークスポーンごと村を沈め、人々を逃したというのだ*3

ダークスポーンの穢れを普通に治療することができないのは真実で、たとえばOriginsではデイルズエルフの主人公が治療の名目でダンカンに連れて行かれグレイ・ウォーデンの儀式を受けている。DA2のアヴェリンの夫ウェズリーはその場で命を断つしかなかった。地底回廊でカーヴァーかベサニーが穢れを受け、ウォーデンに加入する展開もある。

要するに、穢れを受けて生き残る術はウォーデンになるくらいしかないのだ。しかも穢れを放置しているとグール化してしまうことがある。Originsに出てくるタムレンがその例だ。洗礼の儀式は耐性がなければ即死する。耐性があってウォーデンになれても穢れがなくなったわけではなく、穢れによって一時的な力を得るだけで、遅かれ早かれやはりグールになってしまうらしい。だからその前に地底回廊で戦って死ぬのが慣わしになっている。

第5次ブライト時のフェレルデンではウォーデンが壊滅状態になっており、生き残りは新兵2人しかいなかった。たとえ壊滅していなくとも、洗礼の儀式は誰でも気軽に受けられるものではないし、運よく儀式を生き残っても戦いの人生を送ることになる。また、穢れがあまりに進行していると難しそうだ。洗礼の儀式で人々を救うのは非現実的で、そもそも村長にそんな知識があるわけもなく、実際にできることはほとんどなかっただろう。

小さな村にたいした武力があったとは思えず、村ごと水没させるのはダークスポーン撃退の苦肉の策であったことも間違いない。そして結果的に、残酷だが逃げることのできない人々の苦しみを長引かせず、逃げられるものは効率的に逃がすことができた。ただ、村民がこの事実を知らなかった以上、誰にも知らせず実行したと見られ、関係ないものたちをかなり巻き込んで殺した可能性がある。そうでもしなければ犠牲がもっと多かったのかもしれないし、そうではないかもしれない。これはなんとも言えない。

 

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↑水が引いた後の旧クレストウッド村。病人が隔離されていた洞窟以外にも、民家には死体が多い。

緊迫した状況下で多くを救うために非情な判断をしたことは酌量の余地があるだろう。ただ、その後の行動についてはどうだろうか。村長は長い間その事実を隠して説明責任を果たさなかった上、村を沈めたのはダークスポーンだと虚偽の説明をしていた。さらに真実が明らかになるのを恐れ、アンデッドが人々を脅かしているにもかかわらず、審問官を事実から遠ざけようとした。人命より保身を優先した罪は重いだろう。しかもその後逃亡し、裁きの場でも自身の行いを省みることはなかった。

 

クレストウッドの村長に対しての選択肢は「追放」「フェレルデン投獄」「処刑」だったかと思う。まあ処刑を選ぶつもりは元々ないが、さすがにこの件で処刑するのはあんまりだろう。無罪放免がないのは、そのつもりなら村長捜索の作戦を実行しなければいいからだろうか(逃亡したままにしておけばいい。わざわざ探すのはなんらかの処罰が必要と考えているからこそ)。

前のプレイでは追放を選んだ記憶があるが、今回もそれを選ぼうとして考えた。この危険すぎる世の中で追放するのは、投獄よりよっぽど悲惨なのではないかと。というわけで、選んだのは「フェレルデン投獄」。投獄先がスカイホールドでないのはクレストウッドがフェレルデンにあるからだろうか。スカイホールドの牢獄はひどい状態であるため、フェレルデンの方がよっぽど快適だろう。

 

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クレストウッドの件と似たようなケースがもうひとつある。獅子の地にあるサーニアという街のプーランだ。彼女は採石場を赤いテンプル騎士に売ったのだという。かれらが何をしているか知らなかったとプーランは言ったが、実際にはすべてを知った上でかれらに人々を差し出し、引き換えに食糧やコインを得ていた。差し出された人々はレッド・リリウムに侵されて変貌させられている。

天変地異と戦乱の時代を生き抜くのは大変なことだ。人々を養うためには食糧や資金が必要なのだ。それはそうだろう。私服を肥やすためにやったことではないのは明らかだ。しかし、どうなるか知りながら選別して人命を差し出すのが仕方ないと言えるだろうか。

クレストウッドのケースではどう転んでも穢れの病になってしまった人々は置き去りにするか命を断つしかなかったかもしれない。そうでない人々が巻き込まれていたとしても、さすがに意図的に殺したわけではないだろう。

しかしここで差し出された人々はそうではない。プーランは交渉の上、人々を差し出していた。相手が加害者だと知りながら、加害に加担してしまったのだ。人々を養うためとはいえ、加担すれば犠牲者が増えるばかりだと分かっていたはずで、それでも加担し続けた。圧力をかけられていたのも明らかで、断れば何をされるか分からず抗う術はなかったかもしれない。差し出す人を減らそうとしていたのも確かだ。しかし、優先的に健康なものを生かそうとしていた形跡があり、「生かすべきものとそうでないもの」という選別をしていたのが果たして仕方がない行いと言えるだろうか。クレストウッドの例のように迅速に逃げなくてはならない場面で物理的に逃げられないものを犠牲にするしかなかった、というのとも違うように思われるが、どうだろう。

 

これらは人々(あるいは、自分自身)を守るために誰かを犠牲にせざるを得なかった、という構図が類似している。しかし過去のクレストウッド村長のしたことが人々の犠牲を最小限にするためだった*4のに対し、プーランは人々を養うためでありながら犠牲を増やす手伝いを「そうと知りながら」してしまっているところに大きな違いがある。ただしクレストウッド村長も人々が危険にさらされている状況で保身を優先している点はいただけない。

 

プーランに対する選択肢は「解放」「労働」「処刑」「サーニア復興」「資金上納*5」だ。上記の理由によりクレストウッドの村長よりは重めの判決を出したい。

サーニア復興が具体的に何をすることなのか分からないが、あれだけのことをしてしまった後であの土地に戻るとしたら、住民はどう感じるだろう。採石場に送られて事実を知った上で生還した人もかなりいるのだ。自分を「生贄」にした張本人と一緒に働くのは相当嫌じゃないだろうか。

というわけで選んだのは「労働」だ。クレストウッド村長の「投獄」はおそらく強制労働を含まないため、「労働」の方が重いかな、と判断した*6。というかそのほかは処刑と解放しかないため。投獄の選択肢がないのはなぜだろうか。

 

 

クレストウッド村長にせよ、サーニアのプーランにせよ、喜んでしたことではないだろうし、救えるものを救いたいと思っていたのも明らかだが、一方で「仕方がないことだったので責められるいわれはない」という態度が一貫している*7。しかし、どんな理由があったとしても、犠牲になったものにしてみればとても正当化できるようなことではない。特にプーランはかなり意図的だったにもかかわらず自責の念がほとんど見られないあたり、ちょっと恐ろしい。現実の歴史を見てみれば、おそらく誰でもこうなりうるのだろう…

 

 

長くなったので続きはまた次回に。書くことたくさんあるな!

 

それにしてもなんでも審問官に任せすぎるだろ。いいのかこんな任せちゃって…

 

*1:誰にどう思われようと関係ないならあまり問題にはならない。ひとつの判決によって仲間との関係が大きく悪化することもたぶんない。

*2:たとえば処刑の選択肢がある囚人もいれば、そういう選択肢が出てこない囚人もいる、というような。主人公の出自や取得したパークによって増える選択肢もある。

*3:ちょっとうろ覚えなので少し間違ってるかもしれない。

*4:結果的にアンデッドを量産して脅威を増やしてしまったが、さすがにそれを予測するのは無理だろう。

*5:これを選んだら何がどうなるのか?と思って選んでみたら貴族出身の審問官がサーニアの利益を全部自分の家のものにするというやつで、仲間の好感度が片っ端からダウンして笑った。えげつねえな。

*6:現実の日本においても禁錮刑より懲役刑の方が刑として重いはずである。

*7:村長は申し訳ありませんでした、との書き置きを残しているが逃亡している上に開き直る。

Dragon Age: Inquisition 3周目プレイ記録②

※この記事には作品のネタバレが含まれます。

始まりはあのヘイブンから…

 

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直前までOriginsをやっていたため、ヘイブンといえばドラゴンを信奉する危険な一団のイメージを引きずっていたが、2を飛ばしたのであっという間に10年ほどが経過し、ヘイブンは教会の巡礼地になっていた。Inquisitionでは聖灰の神殿が大爆発を起こしたあとで人々は混乱の中にあり、巡礼という雰囲気でもない。事件が起きる前のヘイブンも少し見てみたかった気がする。


聖灰については、Originsにおいて血で穢すルートを当初予定していた。主人公は無階級民のドワーフで、アンドラステに対しての畏敬の念が皆無であり、無理なく聖灰を穢せるのではないかと考えたからだ。しかしガーディアンとの戦闘が思いのほか厳しく、面倒なので諦めた。信仰心の強いレリアナやウィンを失うことになるらしいので、やらなくてよかったかもしれない。

Originsは4周しているが結局一度も聖灰を穢していない。主人公には一貫した人格を持たせたいので悪事を働くにも動機が欲しいが、なかなか他人の遺灰を穢す動機をひねり出すのは難しい。デイルズエルフでさえアンドラステ個人に恨みはなさそうだ。

そういうわけで、当初の予定から外れて聖灰は健在だ。ただしInquisitionでは聖灰の行方はわからなくなっているらしい。

 


Inquisition序盤の分岐点はテンプル騎士を仲間にするか魔道士を仲間にするか、という選択だ。物語上はどちらを支持するかではなく、先にどちらと接触するかという選択なのだが、片方は敵に支配されてしまうためどちらか一方しか仲間にできない*1

この泥沼の戦争になるにいたった経緯と今回の主人公がサークル出身の魔道士であることを考えれば魔道士の方を味方につけたいが、前2周のプレイがどちらも魔道士だったので今回はテンプル騎士を選んだ。

魔道士の扱いや行動の自由は所属のサークルによって大きく違うが、主人公のいたオストウィックのサークルは割と安定していたらしいから、そこまでひどい扱いはされなかったかもしれない。しかし常にテンプル騎士の監視があり、自由に外出はできず、危険とみなされれば静者にされるか殺されてしまうのはどこも同じだと思われる。

貴族出身だとサークルでの扱いは少しよくなるらしい。今回の主人公もトレベリアンという貴族の出身で、ヴィヴィエンヌのように外出含めてある程度の自由はあったかもしれない。外の社会とは隔絶されている一方で、サークル内での生活に出身の階級が反映されるとすれば、それもまた世知辛い話だ。

とりあえず多少の自由が許されていようとも、今回のアトリアさんというキャラクターがそんな窮屈な環境に満足していたとは到底考えられないので、サークルとテンプル騎士、その大元の教会という構造に好意を抱いているわけはない。これが今回のロールプレイのベースになる。ちなみにトレベリアン家は教会との繋がりが強いらしいので、家族との関係もよくはないだろう。

 

ただ、今回の反乱にアトリアさんが賛成するかといえば必ずしもそうではないだろうし、そもそも大半の末端の魔道士はなぜこんなことになったのかよく分かっていなそうだ。正直3周目のプレイヤーとしてもよく分かっているかと言われると微妙*2だし、アトリアさんも自由は求めつつ、きっと微妙だろう。

そういえば反乱の要因といえば「静者」の問題も大きいはずだが、Inquisitionではあまり静者について詳細に描かれない。カサンドラ・ペンタガーストのイベントを進めると静者の秘密が判明するのだが、Originsや2をプレイしていないと魔道士にとって静者化がどれほど恐ろしいか分かりにくそうだ。

 


とにかく、アトリアさんは微妙な立ち位置とはいえ基本的には自由を求める魔道士だ。戦争は望まないが、教会にもサークルにも強く否定的な意見を持っている。こういうキャラクターでテンプル騎士に先に接触するのは少し不自然ではないだろうか…とも考えた。しかし反乱魔道士は向こうから接触してきており、罠を疑っても不思議はないだろう。というわけで、思い切ってテンプル騎士を選んだのだった。

 

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テンプル騎士ルートだとフェイドに入ることになり、コールの手助けを受けることができる。今まで選んだことがなかったので、なかなかに新鮮だった。魔道士ルートで悪夢的な未来を見るよりメンタルの負荷は軽めだ。


結果的に、サークルの構造を支持しない魔道士の主人公がテンプル騎士を仲間に引き入れるのは、悪くない選択だった。テンプル騎士団の解散を宣言できるからだ。なおかつかれらを審問会の管理下に置くことができる。魔道士がテンプル騎士団の解散を宣言し、管理下に置く!これはなかなかすごいことだ。これでサークル・オブ・メジャイの悪しき構造に終止符を打つことができるのだ…というほど甘くもないだろうが。

しかしよく考えると、魔道士たちを味方につけるよりリスクは高いような気もする。魔道士はたしかに大きな力を持っていて、それを権力や支配力を得るために使おうと思えば使えるのだが、基本的には魔法をコントロールして普通に生活したい者が大半のはずだ。それよりは元々権力をもって監視と制裁のために存在する軍隊、テンプル騎士団の方がよっぽど危ない。しかも魔道士を厳しく管理されるべき危険な存在と見なして人間扱いしたがらないタイプも多い。

もちろんみんながそうではないが、思えば危険な集団を味方につけてしまったものだ…とあとからなんとなく後悔した。たしかに悪い選択ではなかったのだが、軍事力を高めるのはあとあと面倒なことに繋がりそうだ。テンプル騎士団を引き入れたことで、世間的にはテンプル騎士団への信頼がそのまま審問会の信頼になったという話もあって、審問会が新たなテンプル騎士団になってしまう可能性もなくはない。組織は長く続けば必ず腐敗するし、物語としても腐敗させる気は満々のようだから*3

 

 

 

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ところで、このルートでは優雅に遅れてくるドリアンを見ることができる。なかなか熱くて面白い。

そういえば、ロデリック大法官にはあまりよい印象を抱いていなかったが、彼が何気なく歩いた小道が皆の命を救う…という展開に今までになく胸が熱くなった。自分も歳だろうか。

ヘイブンの惨劇から逃れ、新たな場所へたどり着く前の苦しい時に皆が聖歌を歌う、あの場面は…信仰心のないアトリアさんはうんざりしただろう*4

 

*1:どちらか一方とは言っても組織として行動している者たちのみの話で、バラバラに行動している者たちも多く、それぞれ審問会に来ることはあるので結局どっちも仲間にいるのだが。

*2:Dragon Age 2での件は反乱の引き金にはなっただろうが、おそらくこれだけが原因ではないはずで、複数の要因が絡み合い、ついに爆発したというところだろうか。

*3:DLC「招かれざる客」をやるとよく分かる。

*4:異教徒であるデイルズエルフの前主人公カフ・ラヴェランも引いていたと思う。信仰のもとにひとつになるって、結構怖い。