無真獣の巣穴

らくがきとかゲームとかなんかそんなん。

Dragon Age: Inquisition プレイ記録(15)招かれざる客 -クナリの侵攻-

※この記事には重大なネタバレが含まれます。

 

審問会がそのあり方を問われている中、事態は新たな局面を迎える。会議の途中でクナリの侵攻計画が明らかになり、さらにフェンハレルの密偵が何かを企てていることも明らかになるのだ。ここで審問会は問題の解明のために動くが、クナリの密偵の死体を隠したりなど、議会にその動きを悟らせないようにしたため「信頼できない組織」感は一層強まってしまう。*1

 

スクリーンショット。レリアナやカレンの前で必死に訴えるジョゼフィーヌ。

密偵のことではありません!クナリ族の死体を隠しましたね。あなた方はウインターパレスを支配しているようなものです!」と訴えるジョゼフィーヌ。外交を彼女にほとんど丸投げしていることも審問会の大きな問題のひとつではある。

 

審問会は混沌の中で真相を探し出し、問題を解決するために立ち上げられた組織だ。講和会議での爆発事件、魔道士とテンプル騎士の泥沼の対立、ヴェナトリの暗躍やグレイ・ウォーデンの異変、その背後にあるコリーフィウスという脅威、それらの事実を解き明かして対処し、各地のヴェイルの裂け目を塞いできた。その過程で審問官は「裁判」という形で人を裁くことにもなった。
しかし、それらが本当に「公正」なものだったかというと、そうではないだろう。審問会は完全に閉じられた組織だったわけではない。少なくとも各地域、外部の組織とのやりとりはかなりあった。しかし、ほとんどのことは顧問ら数人の話し合いで決められ、裁判に至っては審問官個人の裁量で判決が下されていた。明確なルールが存在するわけでもない。選択肢の限られた危機的な混沌の中においては必要なことだったかもしれないが、強大な影響力と武力を持ちながらそのままの形を続けていけば、さらに危険な組織になり果てるだろう。
たとえ審問官が「公正」な人物であったとしても、権力を持ちながら変わらずに居続ける保証もなければ、審問官がいなくなったときに別の人間が同じ席に着き、同じように「公正」であり続ける保証もない。もちろんこれらは審問会特有の問題点というわけではなく、あらゆる団体、組織、国家に言えることでもあるのだが、明文化されたルールを作った様子が見られないのは審問会の大きな問題点だ。

 

スクリーンショット。ジョゼフィーヌの後姿と、ジョゼフィーヌに向かって話すティーガン伯爵。

「秘密と嘘か。あなた方はなぜ我々が審問会を恐れているか、理解しているのか?」と話すティーガン伯爵。12年ほど前のブライトのときにはレッドクリフでウォーデンのよき味方となった。今回はフェレルデンの代表として登場し、審問会に対しては不信の態度を示す。審問会は秘密裏の活動も多く、透明性のある組織とは言えない。信用されないのも無理はない。

 

スクリーンショット。ティーガンの後姿と、テーブルをはさんだ向こう側に立っている審問官。

審問官に対し「まるで自分達が、すべての問題の答えであるかのように振る舞う。今度はいつ戦争に我々を巻き込むつもりだ?」と語りかけるティーガン伯爵。個人に依存した組織は独善と隣り合わせだ。

 

 

クナリの動向を追っていくと爆薬の生産に使われているドラゴンのもとにたどりつくが、恐ろしいことに条件によってはここでアイアン・ブルがクナリ側につくことになる。たとえ審問官がパートナーであってもだ*2。今回はこちらを裏切ることはないが、ブルの立場にしてみればどちらにしろ何かを裏切ることになってしまう。このあたりの葛藤はこのDLCでは見られないが、突撃兵を助けるかクナリの同胞を助けるかの選択を迫られたあのとき、審問官に背中を押されたことによってすでに吹っ切れているのかもしれない。

 

スクリーンショット。石造りのダンジョンに杖を背負ってたたずむ審問官。パーティーメンバーのアイコンが表示されていて、発言しているのがアイアン・ブルであることがわかる。そのほかにはカサンドラとセラがパーティとして同行している。

「ザ・アイアン・ブルは大丈夫だ。これが終わったら酒に付き合って貰うぞ。たっぷりとな」と話すアイアン・ブル。

 

ドラゴン・アターシはクナリの計画のためにすでにかなり痛めつけられた状態で、倒す他に逃す選択をとることもできる*3。これまでドラゴンといえば殺す一択だった*4ので、ここで逃す選択肢をとれるのはありがたい。アトリアさんに慈悲はないかもしれないが無用な殺生はしない。人間以外ならなおさらだ。とはいえそこが人里ならドラゴンを逃すのにも問題はあるだろう。エルヴィアンで移動していたのでダヴァラードが具体的にどのあたりなのかまったく分からなかったが、集落などがありそうな雰囲気ではなかった。その後のアターシが元気にしていることを願いたい。*5

 

クナリは計画のために苦痛を与えるやり方でドラゴンを利用しようし、それをアンドラステ教会側の審問官が阻止してドラゴンを逃がすという構図になった*6が、キュンの教えがアンドラステ教会*7と比較してとりわけ残虐かというと、そういうわけではない。
キュンについての情報は十分とは言えないものの、コーデックスやThe World of Thedasにある記述である程度知ることができる。キュンは非常に厳格に規律を重んじ、自由を制限する傾向にあるが、それらは全体の安定、秩序、平等な社会の実現のためだ。キュンは、常に誰かを犠牲にして成り立っている不平等な社会への絶望から生まれた哲学*8なのだ。南部に侵攻しようとしているのも、アイアン・ブルによれば「悪の貴族から人々を救う」のが理由のひとつではないかとしている。

 

スクリーンショット。石造りのダンジョンに立つ審問官と武器や防具を装備した仲間たち。メンバーはひとつ前の画像と同じ。

「俺達は南部の腐敗を語っている。悪の貴族を倒して人々を救おうとする奴が出てもおかしくないだろう?」と話すアイアン・ブル。



アターシがいる部屋の前にあった日誌によれば調教師はドラゴンを痛めつけていることに苦痛を感じており、「キュンの文節を何度も繰り返している」「私はこんなことの為にキュンに加わったのではない」と書かれている。キュンの文節に他者(動物)に対する倫理的配慮に関することが書かれているのかどうかは定かではないが、少なくとも無用に残虐なものでないことは間違いない。しかし、キュンは全体の秩序のために拷問のような手段も辞さない傾向にある。
一方アンドラステ教社会に拷問が存在しないかといえば、まずそんなことはない。間違いなく、表立っていないだけに過ぎない。またクナリの社会に比べて自由があるかといえばそういうわけでもない。アイアン・ブルも語っていたが、自身の道を自分で自由に選べるものはアンドラステ教社会であっても少数派で、社会の仕組みや文化に違いはあっても庶民の暮らしにそれほど大きな差があるわけではない。

この調教師はおそらく一般的にクナリとみなされる角のある種族・コシスではない、キュンに従う人間とエルフのようだが、とにかくドラゴンを痛めつけるのは不本意だったようだ。生まれたときからキュンのもとで生きているものなら「全体の利益のために」滅私に徹するところかもしれないが、改宗者にとってはかなり苦しいものであったらしい。しかし生まれたときからクナリであり、あの屈強なアイアン・ブルでさえ、かつての戦場ではひどく苦しみ、自ら「再教育」を受けたのだという。クナリ(コシス)がとりわけ残虐なわけでも感情がないわけでもない。また人間がそうであるように、個人差も大きい。かれらは特別に異質な存在というわけでもないのだ。

 

 

クナリの社会は拷問のような「再教育」などおそろしい一面もあるが、おそらく役割さえ果たせれば少なくとも迫害されることはなく、そのためアンドラステ教社会で冷遇されるエルフがキュンに従っているケースがそれなりにあるようだ。もちろんそれは「同化して役割を果たせば受け入れる」ということに過ぎず、自由を意味するわけではない。一方のアンドラステ教の社会では改宗を条件として異民族地区にエルフを住まわせ、しかし明らかに人間より低い待遇しか受けられないという「同化を強要するのに同化したところで結局差別する」状況にあるが、それよりは対等に扱われるのかもしれない。ただしクナリの役割分担は自分の意思で自由に決められるようなものではなく、先述の調教師のように自分のしていることに苦しんだり、不本意な役割しか与えられないこともあるだろう*9。クナリの方がすべてのエルフにとって平等な社会だ、と言えるかは分からない。

 

ちなみにアンドラステ教会よりはるかに厳格に拘束される魔道士にとっては恐ろしい社会だろう。クナリの魔道士が自らキュンに従う描写など、「全体のために役割をまっとうするのがなによりも尊い」社会に適合している様子もうかがえるが、それ以外の選択肢がないため、生きるにはそうなるしかない。あるいはキュンから逃れ、タル・ヴァショスとして生きるかだ。
合理的で理性的な部分には共感できそうなアトリアさんだが、何からも自由でありたい魔道士として、キュンのもとでは生きられないだろう。

 

 

スクリーンショット。ほとんどが崩れている石造りの遺跡に立つ審問官と仲間たち。パーティーメンバーとしてアイアン・ブル、カサンドラ、コールが同行している。

「これが終わったら、また誰かに棒で叩いて欲しいね」と話すアイアン・ブル。このあとカサンドラにはすかさず断られていた。以前は十分に要望に応えることができなかったので、今度はアトリアさんが全力で叩いてくれるだろう。魔法の棒で。

 

さらにクナリの後を追い、審問官らはついにフェンハレルのもとにたどり着くことになるが—— 続きはまた次回に。

 

 

*1:しかも、フェンハレルは実のところ審問会の内部にいたのだから、これは非常に都合が悪い。

*2:審問官が突撃兵ではなくクナリとしての任務をまっとうせよと背中を押した場合の結果だから当たり前なのだが。

*3:またプレイする時のためのメモとして書いておくが、アターシを出口側に誘導するために動かす装置は荷台で塞がっていて一定以上は動かない。この荷台は審問官の印の能力でしか破壊することができないようだ。どう考えてもただの木の荷台なのに武器で殴ったり燃やしたりしても壊れないのは不自然だが、クナリのなんか… すごい技術によるとてつもなく丈夫な荷台なのかもしれない。

*4:本編の各地のドラゴンにあえてなにもしないという選択はできるが、殺さず遠ざけるような選択肢も欲しかった。敵対しない熊のいる「ハコンの顎」といい、DLCでは熊やドラゴンを殺さない選択がとれるのがうれしい。敵対するしかなかった本編に対しての問題意識が存在するということだと思うので、次作にそれらが反映されるといいなと思う。

*5:一応十分に体力を残した状態でドラゴンを解放したが、そもそも痛めつけられて弱っていたため、ただ逃すのは苦しみを長引かせるだけでは?という気もするが…

*6:アトリアさんは神など信じないので不本意だろうが、どう頑張っても審問会が中立ではなく教会側にある事実はひっくり返せない。

*7:単に教会(chantry)と呼ばれることが大半だが、分かりやすくアンドラステ教と書いておく。

*8:The World of Thedas Vol.1 127pより。

*9:目的を果たすことが重要なので、明らかに向いていない役割を与えられるということもないと思うが。非常に向いているが非常に拒絶している場合などはどうなるのだろうか。あの調教師は役割を拒絶したらどういう処分を受けただろうか。「再教育」が待っているかもしれない。