無真獣の巣穴

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Dragon Age Inquisition プレイ記録(12) 座して待っていたわけではない 〜裁かれしクマ〜

※この記事にはネタバレやうろ覚えの記憶による記述、かなりの憶測が含まれます。


しばらくDA:Iをプレイしていなかったため、どこまで何をやっていたかさっぱり忘れてしまった。とりあえずセーブデータはフロストバック盆地に立っているところだったので、メインクエストは置いておいて、途中まで進んでいたDLC「ハコンの顎」を進めることにした。*1


どうやらハコンの顎のイベントはすでにかなり終盤まで進んでいたようで、さくっとハコンを倒して終了した。神殿を出ると夜になったまま、ハコンを倒してもフィールドが昼に戻ることはないようだ。夜のフロストバック盆地散策はとても楽しかったが、昼が訪れないのはさみしい。ハコンを倒すことで「雪解け(First-Thaw)」の審問官というなかなかよい称号をもらえるのだが、せっかくなので凍りついた沿岸*2が解けて朝が来るところが見たかった。

 

もうそろそろ裁判はないだろう、と思っていたのだが、思わぬところにまだあった。裁かれるのはシュトアヴァッカー。クマである。

スクリーンショット。大きな茶色の熊の横顔。「はぁ… シュトアヴァッカー、村に自分の行いを話すか?」というセリフが表示されている。↑裁きを待つシュトアヴァッカー。

 

アヴァーという人々についての情報はかなり少ないが、かれらにとってクマは非常に重要な生き物であるらしい。クマが、というより、シュトアヴァッカーが、なのかもしれない。とにかく、シュトアヴァッカーはストーンベア・ホールドの特別なクマなのだ。
その大切な存在がなぜ裁きにかけられるのかというと、「太陽の髪」スヴァラの話によれば、攻撃的なアヴァーの集団「ハコンの顎」に利用されかけたことに原因があるらしい。

スクリーンショット。骨や木材、石などからできた立派な椅子に座る族長と、その前に立っている審問官。「誰が正しいかを判断する上で、 族長である私が神々を導くこともある。 どの試練で争いに決着をつけるかは、私が決めている」というセリフが表示されている。↑アヴァーの村、ストーンベア・ホールドの首長「太陽の髪」スヴァラ。

アヴァーとしては友好的なストーンベア・ホールドの人々とは違い、「ハコンの顎」は非常に好戦的で、「低地の者*3」に対して問答無用で攻撃してくるような集団だ。ストーンベア・ホールドにとっても同胞ではありつつ厄介な存在らしい。かれらは冬王ハコンと呼ばれる神の召喚を試みていた。

アヴァーは多神教だが、デイルズエルフの神々ともまた違い、アヴァーにとっての神とは「低地の者」にとっての精霊である。アヴァーは精霊を信仰しているだけでなく、魔道士たちの魔法の指導を精霊が担うなど、他の文化では見られないほど精霊と繋がりが深い。「ハコンの顎」が解放させようとしていた神「冬王ハコン」も、要するに精霊であり、その凶暴さを考えると「低地の者」にとっての悪魔と考えてよさそうだ。
ソラスによれば精霊はその目的をねじ曲げられることによって悪魔になるらしい。ハコンもそもそもは悪魔ではないのだろうが、よからぬ目的に利用するために召喚されることによって悪魔となったのだろう。


結局解放されてしまったハコン(ハイドラゴン)を審問官が倒し、ストーンベア・ホールドの人々が喜ぶのだが、神殺しを喜ばれるのはなかなか奇妙な感じがする。

ここでソラスの友人の精霊を思い出してみよう。あの精霊は魔道士に召喚され、命令によって本来の目的をねじ曲げられて悪魔となった後、結果的に死を迎えた。ソラスは精霊を形作っているものが強ければ、いつか蘇るかもしれないと言っていたと記憶している。しかしまったく同じ存在として再生するわけではないらしい。人格、積み重ねられた記憶、経験は失われ、別の存在として生まれるのだろう。
あれほど強力な存在であるハコンであれば、いつか悪魔としてねじ曲げられていない、元の精霊に近い形で再生する可能性が高そうだ。精霊という存在についてはなかなか難解でよく分からないことが多いが、精霊を形作るものが思念や記憶だとすると、信仰があればまたハコンとして存在できそうに思える。悪しき存在になってしまった神が死によって神に戻る、ということでアヴァーの人々は喜んでいるのだと思われる。「死と再生」というのはアヴァーにとって重要な概念のようだ。

 

スクリーンショット。石造りの牢獄に立つ審問官と、たてがみのある大きな熊。↑捕らえられていたところを解放されたシュトアヴァッカー。

前置きが長くなったが、問題はシュトアヴァッカーはなぜ裁かれることになったのか、だ。精霊や悪魔がフェイドから出て安定的に活動するにはおそらく肉体が必要で、「ハコンの顎」は当初シュトアヴァッカーにハコンを召喚しようとしていたようだ。そのためにシュトアヴァッカーは牢に捕らえられており、そこを審問官らが見つけて解放したため、かれらの計画は頓挫した。その「ハコンの顎」の計画に利用されそうになったというのが問題で、スヴァラが言うには「利用されるくらいなら戦って死ぬべきだった」らしい。

繰り返すが、シュトアヴァッカーはクマだ。人間に飼われているというわけではなく、どうやら村の近くでほとんど自由に暮らしている、半野生のクマのようだ。村の敵に利用されるくらいなら戦って死ぬべき、はクマにはなかなか難しい注文だし、「低地の者」の感覚的には酷な話だと思う。
さすがにクマを裁くのはアヴァーとしても一般的ではないようだが、ストーンベア・ホールドにとって重要な存在であるシュトアヴァッカーが悪事に利用されそうになったことに対して、スヴァラはなんらかのけじめのようなものが必要と考えたのかもしれない。このような場合(精霊が絡む問題のことだろうか)の裁きは首長以外に預言者が行う場合もあるようだが、微妙なところらしい。低地の者に頼むのは異例中の異例であることは間違いない。

 

スクリーンショット。族長のそばに立っている審問官。スペシャル、おやつを減らす?、 これで処罰は十分だ、 「クマらせて」 やる、という4つの選択肢が表示されている。↑「クマらせて」やる、というダジャレ選択肢。

本クエストでは「クマった」などというダジャレ選択肢が連発される。我が審問官のアトリアさんはそこそこユーモアのある方だと思うが、ダジャレは言わないと思うので選択はしない。
これまでダジャレ選択肢を選んだことがないので詳細を知るべく検索してみると、英語ではいちいち単語にbearをねじこむ言葉遊びをしているようだ。英語初心者としては面白くて感心してしまうが、カサンドラの反応を見るとかなりくだらないダジャレなのだろう。日本語字幕では「クマった」となっている。くだらなさを日本語でよく表現できていると思う。英語のダジャレを日本語で表現するのはなかなか大変そうだ。

シュトアヴァッカーに対する裁判は正式な雰囲気のものではなく、首長スヴァラもそこまでクマを厳しく罰しようとしている様子はない。選択肢の中では「おやつを減らす」などが少し気になるが、目を引くのはやはり密偵勧誘だろう。クマの密偵が手に入るというのはなんとも魅惑的ではないか。前回もだったが、今回も密偵として審問会に迎え入れることにした。アヴァーとしては低地の者のところで働くのはあまり名誉なことではないらしく、罰として機能するらしい。少し複雑な気持ちだ。
ちなみに人間の魔道士審問官だと「静者にする」という選択肢が存在するが、クマを静者にするのが可能かどうかは分からないし、必要性も感じない。サークル出身なら「罰といえば静者化」という発想になるのはそんなに不思議ではないし、確かに今後シュトアヴァッカーに悪魔を憑依させるなどということは完璧に防げるかもしれない。しかし静者化は人格の破壊である*4ため、人間に対しても人間以外に対してもかなり残酷な行為だ。さすがにスヴァラが容認するとも思えない。なかなか恐ろしい選択肢だ。

 

シュトアヴァッカーを密偵として受け入れた後に戦略テーブルで発生する作戦の名前は、またしてもダジャレで「クマった問題」となっている。英語では「Too Grizzly To Bear」だったようだ。意味は「耐えるにはおそろしすぎる」だろうか。grizzlyはヒグマを指すが、同じ発音のgrisly(おそろしい、おぞましい)にかけたのだろう。bearは動詞の「耐える」だが、これもクマを指すbearにかけてある。まさにクマづくしだ。
指揮官カレンはシュトアヴァッカーから「皮膚病の小熊」に間違われて舐められたそうなので、それはそれはgrislyだったに違いない。密偵として勧誘したものの、実際クマを働かせる気はなく、結局レリアナに頼んでほどよい洞窟を見つけてもらった。そこをねぐらとして、シュトアヴァッカーは魚や木の実を食べて自由に暮らすだろう。一件落着だ。

 

スクリーンショット。報告書を読むレリアナ。「審問会 任務報告 クマった問題 シュトアヴァッカーは、スカイホールドの補給線か ら遠く離れた洞窟で無事に暮らしているわ。 川の近くで、大きな魚がたくさんいるところよ。 彼女はとても満足しているようね。 二度と洞窟を出たがらないかもしれないのが、唯一の問題だと思う。 レリアナ」と書かれた書類が表示されている。↑与えられた洞窟にシュトアヴァッカーは大満足のようだが……


……ちょっと待ってほしい。本当にこれでよかったのだろうか?

まず、シュトアヴァッカーを審問会に受け入れる際、スカイホールドまで連れてきたかどうかは分からないが、フロストバック盆地からはそれなりに移動が必要だったのではないかと思う。その時点でクマにとってはかなり負担になっただろう。指揮官カレンのことはそれなりに気に入ったようだが、審問会の他の兵士たちもそうだったとは限らない。また、レリアナが見つけた洞窟は正確な位置が分からないが、フロストバック盆地ではなさそうに思える。
つまり、ここ最近ハコンの顎に捕らえられたり戦闘に参加したりなどでストレスの多かったシュトアヴァッカーを、住み慣れた場所から引き離し、慣れない人間たちの中でしばらく過ごさせたのち、まったく別の環境に放してきた……ということになる。

人間だって環境の変化は負担が大きいが、繊細な野生のクマならなおさらだ。これではシュトアヴァッカーに対しての罰として重すぎたのではないか。しかも、世界観的にはあまり問題視されないかもしれないが、生き物を元いた場所から離れた別の場所に放すことは、人間が干渉しなければあり得ない環境の変化をもたらす可能性があるため、好ましくない。*5

そもそも、シュトアヴァッカーに罪などない。受けるべき罰などなかったのだ。アヴァーとしても村の大切なクマに重い罰など求めてはいなかっただろう。半野生のクマとして、アヴァーと適度な距離を保ちつつ平穏に暮らしていたのなら、そこから動かす必要は微塵もなかったのだ。審問会がクマを終生飼育できるわけでもない*6。特に処罰しない選択肢もあったはずだが、けじめとしてどうしてもなんらかの対処が必要なら、「おやつを減らす」くらいが妥当だった。たぶん、シュトアヴァッカーの健康のためにも。

 

あちこちで遭遇するクマを殺してばかりの本作においてこれらはクマと敵対しない貴重なクエストなのだが、目先の密偵ほしさにシュトアヴァッカーを無意味に振り回してしまった気がするし、アヴァーにも申し訳ないことをした気がする。

人間以外のあらゆる生き物に敬意と畏怖を抱くアトリアさんの判断として、今回は痛恨のミスだったと言わざるを得ない……。

 

スクリーンショット。緑の炎がともるろうそくがたくさんある部屋に立つ預言者と審問官。「魔法で生まれた者より優れた師はいないだろう? 村の精霊たちは数百年もの間、こうして手伝ってくれている」というセリフが表示されている。↑アヴァーの預言者。かれらの魔道士は魔法の修行のため一時的に自らの身体で精霊と共存し、その後儀式によって精霊と別れる、というやり方で魔法を学んでいるらしい。

ちなみに、アヴァーからはもう1人密偵として受け入れられる人物がいる。自らストーンベア・ホールドの追放者となることを選んだシグリッドだ。彼女は魔道士として精霊から指導を受け、しかし精霊と離れたくないために儀式を意図的に失敗させ、追放者となることを選んだ。シグリッドは師である精霊と離れたくなかったようだ。
精霊と共存していた人物は作中これまでもいたが、必ず悪いことになるというわけでもないし、破滅的な結果をもたらした例にしても、精霊と一緒にいたからというより環境が悪すぎた結果に思える*7。ただ依存するのはあまりよくなさそうだ。シグリッドが精霊に依存するのは村で孤立していることが原因のようなので、精霊と離れるにしても離れないにしても、審問会で居場所を見つけられたらよいのではないだろうか。とりあえず、低地の魔道士たちとの文化交流はうまくいったようだ。こちらの密偵勧誘は有意義なものとなった。

ただし、カサンドラやセラからの好感度は下がるのだった。精霊を宿していたら即悪鬼というわけではないと思うのだが……。

 

 

*1:ちなみにDA:Iをプレイしていない間何をしていたかというと、大雪のため雪かきに苦しんだり、また新しいLINEスタンプを作ったりしていた。あといまさらアニメのヒカルの碁にハマって囲碁を始め、しばらくアプリで詰碁やAIとの対局ばかりしていた。アトリアさんは囲碁みたいなゲームが好きそうだ。

*2:フロストバック盆地の東から東南にかけて広がっているのは見た感じからなんとなく海だと思っていたが、ワールドマップでは海の存在が確認できない。広大な湖や川もワールドマップ上にはない。見落としかもしれないが、コーデックスやNPCの話からはっきり分かる情報もなかった気がする。
コーカリ荒野の東側は「The Frozen Seas」なので、そのすぐ西にあるフロストバック盆地の南側が海でもおかしくはない。 対岸が見えるが、入り組んだ湾という可能性はある。ただマップの南端に行ってみると「クラウドキャップ湖」と表示されるため、これは湖なのだろう。少し離れた島に移動して見渡してもまわりは岸に囲まれている。どう見てもワールドマップ上に大きな湖は描かれていないが、審問官が探索しているのはまだセダスの世界地図に詳細が記載されていない地域だということか。
……ところで、いまさらだが南側が寒冷なセダスはどうやら南半球らしい。

*3:かれらはアヴァー以外の人間を指してこう呼ぶ。エルフやドワーフやクナリも一緒くただろうか?まあ、低地に住んでいればみんな「低地の者」か……

*4:とはいえ静者にまったく感情がないわけでも人格がないわけでもないし、苦痛がないわけでもない。しかし感情が非常に平坦になり、従順になる。また実のところ元に戻す方法がないわけでもないのだが、基本的には不可逆的な処置。

*5:その地域にいなかった病気などを運んでしまったり、近い種類の生き物と交配してしまったり。環境の微妙なバランスが崩れると連鎖的に他の生き物にも影響が出てしまう。現実でも飼育している生き物や捕獲した生き物をそこらへんの森や林などに放すのはやめよう!

*6:この後解散予定なので……。

*7:戦争の引き金になったアンダースとジャスティスは悪鬼化したからああなったわけではないはずだし、別に彼らが戦争の直接の原因というわけでもない。